アスベスト除去に必要な計画とは?
アスベスト(石綿)は、過去に断熱材や建材として広く使用されていたものの、現在では健康被害の原因として使用が全面禁止されています。もし自宅や所有している建物にアスベストが使用されている可能性がある場合、除去計画を立てることが重要です。
アスベストの除去作業は、専門知識と法的な手続き、厳密な工程管理が求められるため、事前の計画なしに進めることは大きなリスクにつながります。この記事では、安全かつスムーズにアスベスト除去を実施するための計画の立て方や、押さえておきたいポイントを初心者向けにわかりやすく解説します。
アスベストとは何か?
アスベストとは、天然に産出する繊維状鉱物の一種で、耐熱性や絶縁性、防音性に優れているため、かつては建材として広く使われてきました。しかし、アスベスト繊維を吸引すると肺がんや中皮腫などの深刻な健康被害を引き起こすことが明らかになり、2006年以降日本国内では使用が禁止されています。
除去が必要な建物とは?
アスベスト除去の対象となる建物は、以下のようなものです。
昭和50年代から平成初期にかけて建てられた建物
吹付け材、スレート、パイプ被覆材などにアスベストが使われている建材を使用している建物
解体や改修を予定している古い建物
建築年や使用されている建材の種類によって、アスベストの含有が疑われるため、専門家による調査が必要です。
アスベスト除去計画の基本ステップ
アスベスト除去には、正確な計画と段階的な対応が欠かせません。以下のステップに沿って計画を立てていきましょう。
1. 調査と分析
最初のステップは、アスベストが建物に使用されているかどうかの調査です。これは専門の調査会社に依頼することが一般的で、次のような調査が行われます。
建築図面や材料リストの確認
現地での目視調査
材料のサンプリングと成分分析(定性分析・定量分析)
調査結果に基づいて、アスベストの含有状況や種類(レベル1〜3)が特定され、適切な除去計画の基礎となります。
2. 除去方針とスケジュールの決定
調査結果をもとに、どのような方法で除去を行うのかを決定します。除去には以下の3つの分類があり、それぞれ対応が異なります。
レベル1(吹付けアスベスト)…最も危険性が高く、厳重な隔離・防護が必要
レベル2(保温材や耐火被覆材)…管理型除去が必要
レベル3(セメント製品など)…比較的リスクは低いが、粉じん対策が必要
除去作業は、建物の使用状況や周囲への影響も考慮しながら、工期や作業日程を設定します。
3. 行政への届出と許可申請
アスベスト除去工事を行う際は、作業開始の14日前までに、管轄する労働基準監督署や都道府県に所定の届出を行う義務があります。
必要な手続きには以下のようなものがあります。
特定粉じん排出等作業実施届出書の提出
作業計画書(作業範囲・使用機器・保護対策など)の作成
作業従事者の健康診断や講習受講証の確認
違反すると罰則や行政指導の対象になるため、専門業者と連携して確実に進めましょう。
4. 除去作業と廃棄処理
アスベストの除去作業は、基本的に専門業者が行います。以下のような手順で実施されます。
作業エリアの隔離(負圧除じん装置などを設置)
作業員の防護服・マスク着用
アスベスト含有建材の湿潤化・取り外し
廃棄物の密閉・適切な容器での回収
指定処理場への運搬と最終処分
粉じんが飛散しないよう徹底的に管理されるため、周辺住民や関係者の安全も確保されます。
アスベスト除去の注意点と費用感
除去計画を立てるうえで知っておきたい注意点や、費用についても理解しておきましょう。
アスベスト除去にかかる費用
除去費用は、使用されているアスベストの種類や面積、作業の難易度によって異なります。一般的な目安は以下のとおりです。
レベル1:2万〜4万円/㎡
レベル2:1万〜2.5万円/㎡
レベル3:5千〜1.5万円/㎡
加えて、調査費用や届出書類の作成費、廃棄物処理費なども別途必要です。見積もりは複数業者から取ると安心です。
信頼できる業者の選び方
アスベスト除去は高い専門性が求められるため、信頼できる業者に依頼することが不可欠です。業者を選ぶ際は、以下のポイントをチェックしましょう。
国や自治体の認可を受けているか
実績や口コミが豊富か
見積書が明確で、追加費用が発生しないか
作業報告書などの提出があるか
また、担当者が丁寧に説明してくれるかどうかも、安心して任せられるかを見極める材料になります。
近隣への配慮も忘れずに
アスベスト除去作業は近隣住民にも大きな影響を与えるため、事前に説明と挨拶を行い、理解と協力を得ることが大切です。説明時には次のような情報を伝えておくと良いでしょう。
作業期間と時間帯
作業の目的と安全対策
騒音や振動などの可能性
トラブルを防ぎ、円滑に作業を進めるためには、周囲への配慮も計画の一環として欠かせません。
まとめ
アスベスト除去には、高い専門性と法的手続き、そして何より入念な計画が求められます。調査から除去作業、廃棄処理に至るまで、すべての工程を計画的に進めることが、安全性を確保し、無駄なコストやトラブルを回避するカギとなります。
この記事でご紹介した手順やポイントを参考に、まずは専門家に相談しながら、しっかりとした除去計画を立ててください。安心・安全な住環境の実現に向けて、正しい知識と準備がなにより大切です。