アスベスト除去施工とはどのような作業か
アスベスト除去の施工とは、建物内外に使用されているアスベスト含有建材を適切に取り除き、安全な状態にするための専門工事です。この作業は健康被害を未然に防ぐ目的で実施され、法的なルールや技術的な手順に従って行われる必要があります。
施工の際には、飛散防止や周囲の安全確保、作業員の保護など、通常の解体作業とは異なる厳重な対策が講じられます。アスベストは目に見えないほど微細な繊維であり、一度空中に舞うと長時間浮遊しやすく、吸引することで健康リスクを伴います。
そのため、施工には専門知識・資格・設備を備えた業者が対応し、すべての工程で厳密な管理が求められます。
施工前の準備と確認事項
1. 現地調査とアスベストの有無の確認
施工の第一歩は、対象建物にアスベストが使用されているかを確認する現地調査です。特に築年数が1980年代以前の建物は使用されている可能性が高く、サンプルを採取して専門機関で分析します。
2. アスベストの種類とレベルの判定
分析の結果、アスベストが確認された場合、使用されている素材の種類(クリソタイル、アモサイト、クロシドライトなど)や状態(飛散性の有無)により「レベル1〜3」に分類されます。これにより、必要な施工手順や安全対策の規模が決まります。
調査結果に基づき、施工計画の立案に移ります。ここでは作業方法や養生範囲、作業日数、搬出ルート、安全対策などを具体的に設定します。
アスベスト除去施工の基本工程
1. 養生と隔離作業
除去現場はビニールシートや金属枠などで完全に囲い込み、アスベスト繊維が外に漏れないようにします。また、陰圧(負圧)を維持するための除じん装置を設置し、空気が外に漏れ出さない構造にします。
作業エリア外への出入り口には「セキュリティゾーン」や「シャワールーム」を設け、作業員が外部に出る際にアスベストを持ち出さないようにします。
2. 作業員の安全装備
作業にあたる者は、以下のような専用装備を身に着ける必要があります。
* 使い捨て防護服(タイベックなど)
* 高性能防じんマスク(HEPAフィルター付)
* 保護ゴーグル・手袋・長靴
これらはアスベストの吸入・接触を防ぐために必須です。
3. 除去作業の実施
アスベスト含有建材を手作業や機械で丁寧に取り外し、水を噴霧しながら飛散を防止します。除去したアスベストは、専用の二重袋で密封し、ラベルを貼って保管します。
取り除く際に、叩いたり壊したりすると飛散のリスクが高まるため、細心の注意を払いながら進めます。
4. 清掃と環境測定
作業完了後は、現場内の徹底的な清掃を行い、空気中にアスベスト繊維が残っていないかを測定します。この空気環境測定で基準値以下であることが確認されれば、安全が認められ、封鎖を解除します。
これにより、建物の次の解体やリフォーム、利用再開が可能になります。
法令に基づく届け出と記録義務
労働安全衛生法に基づく手続き
アスベスト除去には、労働基準監督署や都道府県への事前届け出が義務付けられています。施工開始の14日前までに提出する必要があるため、計画段階での準備が欠かせません。
作業後の報告と記録保存
作業終了後は、除去の内容や処分先、空気環境測定結果などをまとめた作業記録を作成し、3年間以上保存する義務があります。これにより、後のトラブル防止や監査対応に備えることができます。
適切な届け出と記録管理は、施工の信頼性を高め、法的トラブルを回避するためにも重要です。
施工期間とスケジュールの目安
規模と作業内容による違い
施工期間は、建物の規模や使用されているアスベストの種類、作業のレベルによって異なります。一般的な目安は以下のとおりです。
* 小規模住宅の天井材除去:2〜3日
* 中規模ビルの吹付け材除去:1〜2週間
* 工場などの大規模撤去:1ヶ月以上
工期短縮のための工夫
事前調査や計画段階をしっかり行い、必要資材や作業手順を整理しておくことで、無駄な時間を減らせます。信頼できる業者に依頼すれば、経験に基づいたスムーズな施工が期待できます。
スケジュールに余裕を持たせつつ、住民や近隣への説明も含めた配慮が求められます。
施工を依頼する業者選びのポイント
施工資格と実績の確認
アスベスト除去には「石綿作業主任者」の配置が必要です。また、過去の施工実績が豊富であることも重要です。
* 建設業許可(解体工事業またはとび・土工工事業)を持っているか
* アスベスト除去の施工実績が豊富か
* 作業手順や安全対策が明確に説明されるか
アフターフォローや保証体制
作業後の空気測定や清掃の対応、トラブル時の対応体制が整っている業者を選ぶと安心です。また、報告書の作成代行なども含まれるか確認しておくとよいでしょう。
複数の業者から見積もりを取り、施工内容と金額のバランスを比較することが、納得のいく依頼につながります。
まとめ:安全で確実な施工でリスクをゼロに
アスベスト除去施工は、単なる解体ではなく、高度な安全対策と法令遵守が求められる専門作業です。すべての工程に意味があり、一つひとつが飛散リスクの軽減や健康被害の予防につながっています。
安心して施工を任せるためには、実績と信頼のある業者選びが鍵となります。事前の調査から施工後の報告までをトータルにサポートしてくれるパートナーとともに、安全な住環境づくりを進めましょう。